
ひな祭りの飾りつけは、「いつからいつまで飾る?」「間違った並べ方をしたら失礼?」「マンションで大きな段飾りは無理だけど…」と、いざ飾ろうとすると疑問や不安が出てきやすい行事です。なんとなく飾ってしまうと、片付けるタイミングを逃したり、せっかくの人形が部屋になじまず浮いて見えたりして、「これで合っているのかな」と自信が持てないこともあります。
ひな祭りの飾り方の基本マナーと飾る時期
まずは「いつ・どこに・どのように」ひな人形を飾るのかという、基本的なマナーと考え方から整理しておきます。細かな地域差はありますが、大きく外さなければ失礼になることはないので、ポイントを押さえておけば安心です。
ひな人形は「お守り」であり「飾り」でもある
ひな人形は、女の子の健やかな成長と幸せを願うための「身代わり」とされています。昔は紙やわらで作った人形に厄を移して川に流していましたが、それが発展して豪華なひな人形として飾られるようになりました。ですから、単なるインテリアではなく、お子さまを守る象徴という意識でていねいに扱うことが大切です。
飾り始める時期の目安
一般的な目安としては、以下のような時期がよく選ばれます。
- 立春(2月上旬)を過ぎてから
- 2月中旬〜2月下旬の大安や友引など、縁起のよい日
- ひな祭りの1〜2週間前までに飾り終える
特に厳格な決まりはありませんが、「バタバタせずに、心に余裕を持って飾れるタイミング」が理想です。仕事や家事が忙しいご家庭なら、週末を使って2月中旬ごろにゆっくり飾る、というようにライフスタイルに合わせて問題ありません。
片付ける時期は「ひな祭り後なるべく早く」が基本
「ひな人形を片付けるのが遅いとお嫁に行き遅れる」という言い伝えがありますが、これは片付けを先延ばしにするクセを戒めるための教えと言われています。本来は「きちんと片付ける習慣を身につけましょう」という意味合いが強く、数日遅れたからといって不幸になるわけではありません。
とはいえ、湿気やホコリはひな人形の大敵です。長くきれいに保つためにも、ひな祭りが終わってから1〜2週間以内を目安に、天気のよい乾燥した日に片付けるようにしましょう。
飾る方角や場所の考え方
方角については、昔から「お内裏様を南向き、または東向きに」と言われることがありますが、現代の住宅事情では無理に方角にこだわる必要はありません。それよりも、次のような条件を優先しましょう。
- 直射日光が当たらない(色あせ防止のため)
- エアコンの風が直接当たらない(乾燥・変形防止)
- 子どもがぶつかりにくい安定した場所
- 湿気がこもりにくい
リビングの一角や和室、腰高のチェストの上など、家族が自然と集まり、日常的に目に入る場所がおすすめです。玄関はスペースが十分であれば候補になりますが、外気の出入りで湿気や温度変化が大きい場合には避けたほうが安心です。
マンション・狭い部屋での飾り方の考え方
段飾りが置けないからといって、ひな祭りをあきらめる必要はありません。最近は次のような省スペースなひな人形も増えています。
- 親王飾り(お内裏様とおひな様だけのセット)
- コンパクトなケース飾り
- 木目込み人形や、丸型・立ち雛タイプ
- 壁掛けタペストリー型のひな飾り
「段が何段あるか」「飾りがどれだけ豪華か」よりも、「そのご家庭に合ったサイズで、毎年きちんと飾ってあげられるかどうか」のほうが大切です。収納場所や生活動線を踏まえて、無理なく続けられる飾り方を選びましょう。
ひな祭りの飾り方:段飾り・親王飾り・現代風アレンジ
基本的なマナーを押さえたら、具体的な飾り方を見ていきましょう。同じひな人形でも、飾り方を少し工夫するだけでぐっと華やかになり、写真映えもよくなります。ここでは、代表的なパターン別に解説します。
七段飾り・五段飾りの並べ方の基本
伝統的な段飾りは、段ごとに置く人形と道具が決まっています。細かな違いはありますが、一般的な七段飾りの並びを整理しておきましょう。
- 最上段:お内裏様(男雛)とおひな様(女雛)
- 二段目:三人官女
- 三段目:五人囃子
- 四段目:右大臣・左大臣
- 五段目:仕丁(三人上戸)
- 六・七段目:嫁入り道具(御駕籠・重箱・箪笥など)
五段飾りの場合は、下の段の道具類が省略されることが多いですが、人形の並び方の考え方は基本的に同じです。
お内裏様とおひな様の左右は「地域差」を理解する
「どっちが右?左?」と迷いやすいのが最上段の並びです。結論から言うと、どちらも間違いではありません。おおまかに言うと次のような傾向があります。
- 京雛(関西の慣習が残るタイプ):
向かって右がおひな様、向かって左がお内裏様 - 関東雛(全国的に主流):
向かって右がお内裏様、向かって左がおひな様
購入時の写真や説明書があれば、それに従うのが最も無難です。特に指定がなければ、現在主流の「向かって右がお内裏様」にしておけば、違和感なく見えるでしょう。左右にこだわりすぎるよりも、二人の距離感やバランス、表情がよく見える高さ・角度のほうを大切にするのがおすすめです。
三人官女・五人囃子の飾り方のコツ
三人官女や五人囃子も、一人ひとりの役割が決まっていますが、現代の飾りつけでは「表情がよく見えるバランス」を優先して問題ありません。
- 三人官女:中央に座り雛(お銚子役)、両端に立ち雛を置くのが定番
- 五人囃子:中央の太鼓や大鼓を少し前に出し、立体感を出すと華やか
特に小さなお子さまがいるご家庭では、「この子は太鼓担当だね」「この人はお酒を運ぶ人だよ」と話しながら並べると、ひな人形への愛着がぐっと高まります。
親王飾り(平飾り)を上品に見せるコツ
お内裏様とおひな様だけの親王飾りは、シンプルだからこそ「ちょっとした配置の差」で印象が大きく変わります。上品にまとまりやすいポイントは次のとおりです。
- 左右のバランスをそろえる(屏風の中心と人形の中心がずれすぎないように)
- 雪洞(ぼんぼり)や花をやや外側に置き、「額縁」のように二人を囲む
- 高坏(菱餅を載せる台)を少し手前に出し、奥行きを演出する
- 屏風と台の色味が強い場合は、周りをすっきりさせて色を引き立たせる
親王飾りは、テレビボードやチェストの上などにも置きやすく、インテリアともなじみやすいのが魅力です。後ろに季節の枝もの(桃の花・菜の花)を飾ると、一気に春らしさが増します。
現代の住宅に合う「見せるアレンジ」
せっかくのひな飾りですから、「出して終わり」ではなく、お部屋全体とのコーディネートを楽しむのもおすすめです。現代の住宅に合いやすいアレンジ例を紹介します。
- ひな人形のそばに、桃の花・菜の花・チューリップなど春の花を飾る
- テーブルランナーや布を敷き、段飾りのような「舞台感」を出す
- 壁にひな祭りモチーフのガーランドやタペストリーをプラスする
- 写真映えを意識して、背景になる壁はシンプルに整える
アレンジの際に気をつけたいのは、「ひな人形よりも目立つ装飾を大量に置かない」ことです。主役はあくまで人形なので、周辺の飾りは色数を絞り、ボリュームも控えめにすると、上品で統一感のあるひな祭りコーナーになります。
子どもと一緒に楽しむ飾り方と、長くきれいに保つお手入れ
ひな祭りは、ひな人形を飾るだけでなく、「飾る時間そのもの」を親子で楽しめる行事です。一方で、高価で繊細な人形が多いため、「子どもに触らせて大丈夫?」と迷うこともあるでしょう。ここでは、安全と楽しさ、お手入れの両立方法を解説します。
子どもに「全部触らせない」のではなく、「触っていいもの」を決める
ひな人形は、顔や手、着物の刺繍などが傷みやすいため、無造作に遊ばせると破損の原因になります。しかし、完全に「見るだけ」にしてしまうと、子どもからすると「触っちゃいけない怖い物」になってしまいがちです。
おすすめなのは、次のようなルールを決めることです。
- 人形本体には大人と一緒のときだけ触ってよい
- 小物(お道具やぼんぼり)は、子どもが並べる役を担当する
- 飾る前に手を洗うことを約束する
人形や小物の名前や役割を一緒に確認しながら飾ることで、子どもにとっても「自分のための大切なお人形」という意識が育ちます。
紙製・布製の「触って遊べるひな人形」も併用する
本式のひな人形とは別に、気軽に触って遊べるタイプのひな飾りを用意しておくと安心です。
- フェルトや布でできた柔らかいひな人形
- 紙製のペーパークラフト雛
- 積み木や木製パズル型のひな人形
これらを子ども用の「マイ雛」としてリビングテーブルなどに置いておき、本式のお雛様は高い位置に飾る、といった使い分けをすれば、ひな祭りへの親しみを育てつつ、本物はしっかり守ることができます。
飾る前のお手入れとチェック
毎年飾る前に、次のポイントを確認しておくと、ひな人形を長持ちさせられます。
- 箱から出すときは、手を清潔にし、できれば綿手袋を使う
- 人形の顔や手に触れるときは、強く押さえないようにする
- 着物にホコリがついていないか、軽く確認する
- 箱や緩衝材にカビや湿気の跡がないかチェックする
ホコリが気になる場合は、毛先の柔らかいブラシや、柔らかい布で軽くはらう程度にとどめましょう。強くこすったり、市販の洗剤やスプレーを使用するのは避けてください。
飾っている間の注意点と、しまうときのコツ
飾っている期間中は、次の点を意識すると安心です。
- 窓際に飾る場合は、レースカーテンなどで直射日光を避ける
- 換気の際に雨が吹き込まない位置に置く
- 掃除のときにぶつからないよう、動線を少し変えておく
片付けの際は、焦らず時間に余裕のある日に行いましょう。
- 晴れて湿度の低い日を選ぶ
- 人形の表面のホコリを軽くはらってから収納する
- 購入時の箱・緩衝材があれば、そのまま使う
- 箱の中に防虫剤を入れる場合は、人形専用タイプを選び、直接触れないようにする
収納場所は、押し入れの奥や床下収納など、極端に湿気がこもる場所は避けるのが理想です。衣替えのタイミングなどと合わせて、年に一度は収納スペースを換気すると、カビ対策にもなります。
ひな祭りをもっと楽しむための飾り方アイデアとQ&A
基本を押さえたうえで、「わが家らしいひな祭り」を作る工夫をしてみましょう。また、よくある疑問にも触れておくことで、毎年の悩みを減らせます。
写真映えするひな祭りコーナーの作り方
せっかく飾るなら、成長記録として写真に残したいという方も多いはずです。スマホで撮るだけでも、少し意識するだけで雰囲気がぐっと変わります。
- 背景になる壁をすっきりさせる(カレンダーやポスターを外すなど)
- ひな飾りの高さに合わせて、子どもがしゃがんだり椅子に座ったりして撮影する
- 自然光が入る時間帯に撮ると、やわらかく明るい雰囲気になる
- ひなあられや桃の花を一緒にフレームに入れる
飾り方を決めるときに、「ここに子どもが立ったらどう写るか」をイメージしておくと、毎年撮る記念写真が安定してきれいに残せます。
リビングになじむ「和モダン」な飾り方のヒント
ナチュラルテイストや北欧テイストのリビングに、赤い毛氈(もうせん)や金屏風が強く感じられることもあります。その場合は、和と洋のバランスを意識してみましょう。
- 赤い毛氈の代わりに、生成りやグレーの布を下に敷いてトーンを和らげる
- 金屏風を使わず、木製パネルやシンプルな衝立を背景にする
- 周囲のインテリアは色数を抑え、ひな人形の色を主役にする
- 木製やシンプルデザインのひな人形を選ぶ
無理に「純和風」にしようとせず、今のインテリアに合う形を探したほうが、毎年飾るハードルは下がります。
「よくある疑問」Q&A
最後に、ひな祭りの飾り方でよくある質問を、簡単にまとめます。
Q. 初節句に間に合わず、ひな人形を後から用意しても大丈夫?
A. 問題ありません。初節句にこだわりすぎず、気に入った人形を見つけてから迎えるほうが、長く大切にできます。飾り方やお祝いの仕方で愛情は十分伝わります。
Q. 姉妹がいる場合、ひな人形は1つでいい?
A. ひとつを家族の象徴として共有するご家庭もあれば、長女は段飾り、次女にはコンパクトな親王飾りと、個別に用意するご家庭もあります。絶対の正解はないので、スペースや予算、保管のしやすさで判断して構いません。
Q. 仕事が忙しくて遅く飾っても失礼にならない?
A. まったく問題ありません。ひな祭り当日近くに飾った場合でも、数日〜1週間程度眺めてから片付ければ十分です。「短くても、毎年必ず飾る」ことのほうが、行事としての意味があります。
Q. ひな人形以外の飾り(ポスター・ぬいぐるみ)を一緒に置いてもいい?
A. 置いても構いませんが、ひな人形が埋もれてしまわないよう、数を絞るのがおすすめです。特にキャラクターグッズを置く場合は、色や大きさのバランスを見ながら、主役をひな人形に保つことを意識しましょう。
まとめ:自分の家に合った「続けられる飾り方」がいちばん
ひな祭りの飾り方には、古くからのしきたりや地域差があり、「正解」をひとつに絞ることはできません。ですが、ひな人形が持つ意味と、基本的なマナーさえ押さえておけば、あとはご家庭に合った形にアレンジして大丈夫です。
この記事でお伝えしたポイントを整理すると、次のようになります。
- 飾る時期は、立春〜ひな祭りの1〜2週間前までに。片付けは終了後、なるべく早めに
- 方角よりも「直射日光・湿気・風」を避ける場所選びが重要
- 段飾り・親王飾りとも、「主役はお内裏様とおひな様」という意識でバランスを取る
- マンションや狭い部屋では、コンパクトな親王飾りや壁掛けタイプも立派な選択肢
- 子どもには「触ってよいもの」と「一緒に触るもの」を分け、参加してもらう
- 毎年のお手入れと、湿気を避けた保管で、ひな人形は長くきれいに保てる
大切なのは、「この子の健やかな成長を願う気持ち」を形にすることです。完璧な作法にとらわれすぎず、今の暮らしに合う飾り方を見つけて、親子でひな祭りの時間を楽しんでください。そうして毎年ひな人形を出し入れするたびに、ご家族の思い出も一緒に積み重なっていきます。

