「お伺いします」と「伺います」は、どちらも相手を立てながら「行く」「訪問する」「聞く」「尋ねる」を伝える言葉です。ただし、ビジネスメールや電話で使うときに「お伺いしますは二重敬語では?」と迷う方も多いですね。
私も敬語を見直すたびに、丁寧にしようとして言葉を重ねすぎてしまうことがあります。ここでは、それぞれの意味、二重敬語とされる理由、失礼になりにくい使い分けをわかりやすく整理します。
「お伺いします」と「伺います」の違いを比較
| 項目 | 伺います | お伺いします |
|---|---|---|
| 基本の意味 | 訪問する、行く、聞く、尋ねるの謙譲語 | 「伺う」をより丁重にしようとした表現 |
| 敬語の仕組み | 謙譲語Ⅰ「伺う」+丁寧語「ます」 | 謙譲語Ⅰ「伺う」+謙譲表現「お〜する」+丁寧語「ます」 |
| 二重敬語か | 二重敬語ではない | 原則として二重敬語とされる |
| 使う場面 | 訪問・質問・電話など、幅広いビジネス場面 | 会話や案内文で広く見聞きするが、厳密さが必要な文書では避けると安心 |
| おすすめ度 | 迷ったときの基本表現 | 完全な誤用として断定はしにくいが、言い換えが無難 |
「伺います」の意味と正しい使い方
「伺う」は、自分がへりくだることで相手や相手側の場所を立てる謙譲語です。「行く」「訪ねる」だけでなく、「聞く」「尋ねる」の意味でも使えます。
「伺います」は、この「伺う」に丁寧語の「ます」を付けた形です。すでに敬意が十分に表れているため、取引先、上司、お客様などに対して自然に使えます。
訪問・行く意味での例文
- 明日の10時に、貴社へ伺います。
- 後ほど資料を持って伺います。
- ご都合のよい日時に伺わせていただきます。
「貴社へ伺います」は、自分が相手の会社へ行くことを丁寧に伝える定番表現です。「参ります」も使えますが、「伺います」には相手を訪問するニュアンスがよりはっきりあります。
聞く・尋ねる意味での例文
- 詳細について伺います。
- 差し支えなければ、ご希望を伺ってもよろしいでしょうか。
- 先ほどのお話を改めて伺いました。
質問する意味では、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」のように使います。相手の話を聞くときにも使えるので、電話応対でも役立つ言葉ですね。
「お伺いします」が二重敬語とされる理由
「お伺いします」は、一見するととても丁寧に見える表現です。しかし、敬語の形を分けて見ると、「伺う」そのものがすでに謙譲語です。そこに、動詞をへりくだって表す「お〜する」が加わっています。
つまり、「伺う」と「お〜する」の二つの謙譲表現が重なっているため、「お伺いする」は二重敬語として扱われます。文化庁の『敬語の指針』でも、「お伺いする」は二重敬語の例として挙げられています。
ただし、日常の会話、企業の案内、接客の場面では「お伺いします」が非常に広く使われています。そのため、聞いた相手が必ず不快になる表現ではありません。「絶対に使ってはいけない」と過度に心配する必要はありませんが、正確な敬語を求められる社外文書、就職活動、目上の方への正式な連絡では、「伺います」にしておくと安心ですよ。
場面別|どちらを使えばよい?
正式なメール・文書では「伺います」
日程調整メールや依頼文など、記録として残る文章では「伺います」がおすすめです。
- 【自然】来週火曜日の午後、貴社へ伺います。
- 【自然】ご都合を伺えますでしょうか。
- 【より無難】当日は担当者が伺います。
「お伺いします」を使っても意味が通じないわけではありません。ただ、敬語の正確さを大切にする相手にも安心して読んでもらえるのは「伺います」です。
会話・接客では「お伺いします」もよく使われる
「ご用件をお伺いします」「後ほどお伺いします」は、接客や電話でよく耳にする言い方です。慣用表現として定着しているため、実際のコミュニケーションで大きな問題になる場面は多くありません。
とはいえ、言い換えるなら「ご用件を伺います」「後ほど伺います」で十分丁寧です。言葉選びに迷う時間を減らすためにも、「伺います」を基本形として覚えておくと便利ですね。
「伺う」と「参る」の違いも押さえよう
「伺う」と似た謙譲語に「参る」があります。どちらも「行く」の謙譲語ですが、使える意味の範囲が異なります。
| 言葉 | 主な意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 伺う | 相手のもとへ行く・訪問する/聞く・尋ねる | 午後3時に貴社へ伺います。 |
| 参る | 行く・来る | 会場へ参ります。担当者がそちらに参ります。 |
訪問先を意識して「行く」と伝えるなら「伺います」、単に自分または自社の人が行くことを丁寧に述べるなら「参ります」が使いやすいです。また、「参る」には「聞く・尋ねる」の意味はありません。「ご意見を参ります」とは言わず、「ご意見を伺います」とします。
間違いやすい敬語表現
「お伺いさせていただきます」は必要?
「お伺いさせていただきます」は、「お伺いする」にさらに「させていただく」を重ねた表現です。相手の許可を受け、そのことで自分が恩恵を受ける場面で「させていただく」はなじみますが、単なる訪問予定を伝えるだけなら大げさになりやすいです。
- 【すっきり】明日、貴社へ伺います。
- 【許可の意味がある場合】ご許可をいただけましたら、明日伺わせていただきます。
相手から訪問の許可をもらうことが文脈上はっきりしているなら、「伺わせていただきます」も使えます。ただし、普段は「伺います」で十分ですよ。
「お伺いになります」は使わない
「伺う」は自分側をへりくだらせる謙譲語です。そのため、相手の行動に「お伺いになります」と使うことはできません。相手が訪問する場合は「いらっしゃる」「お越しになる」「お見えになる」などの尊敬語を使います。
- 【誤り】部長がお伺いになります。
- 【自然】部長がお伺いします。
※部長が自社の外部の相手を訪問する場合 - 【自然】お客様がお越しになります。
ここは少しややこしいところです。自社の部長であっても、社外の相手に対して自社側の行動を述べるときは「部長が伺います」と言えます。一方で、部長本人を社内で立てる文脈なら「部長がいらっしゃいます」のように使い分けます。
まとめ|迷ったら「伺います」を選べば安心
「お伺いします」と「伺います」はどちらもよく使われる表現ですが、敬語としての基本は「伺います」です。「伺う」がすでに謙譲語なので、「お〜する」を付けた「お伺いします」は二重敬語とされます。
会話では「お伺いします」も広く定着していますが、ビジネスメール、面接、正式な案内では「伺います」を選ぶと、簡潔で正確な印象になります。丁寧な言葉は、難しく重ねるよりも、相手にわかりやすく自然に伝えることが大切ですね。
