「来る」の敬語は?いらっしゃる・お越しになる・参るの違い

「来る」を敬語にするときは、誰が来るのかを最初に確認しましょう。取引先や上司など、敬意を示したい相手が来るなら「いらっしゃる」「お越しになる」。自分や自社の人が相手のもとへ行くなら「参る」「伺う」を使います。単に文を丁寧にするだけなら「来ます」です。

たとえば「お客様が明日いらっしゃいます」「明日、御社へ伺います」と言えば、来る人に合った敬語になります。この記事では、まず基本の使い分けを押さえ、招待・確認・来訪のお礼など、そのまま使える言い方を紹介します。

「来る」の敬語は3種類|まずは主語で選ぶ

敬語は、相手の動作を高める尊敬語、自分側の動作を控えめに表す謙譲語、文末などを丁寧にする丁寧語に分けて考えると整理しやすくなります。

種類 「来る」に関係する表現 主な使い方
尊敬語 いらっしゃる・お越しになる・おいでになる 相手や上司が来る
謙譲語 参る・伺う 自分側が相手のもとへ行く
丁寧語 来ます 「来る」という文を丁寧に述べる

迷ったときは、次の2つの文を比べてください。「取引先の担当者がいらっしゃいます」では担当者の動作を高めています。一方、「私が御社へ伺います」では自分の動作を控えめに述べています。来る人が相手側か、自分側かが選ぶ基準です。

なお、自分が取引先へ向かう場面では、移動を表す「行く」の敬語として「参る」「伺う」を使います。普段の「こちらに来る」と「そちらへ行く」は視点が異なりますが、ビジネスではどちらも来訪について話す際に必要な表現です。よく使う動詞の敬語をまとめて確認したい方は、よく使う動詞の敬語(基本編)はこちらもご覧ください。

相手が来るときの尊敬語|「いらっしゃる」「お越しになる」

幅広く使える「いらっしゃる」

「いらっしゃる」は「来る」の尊敬語です。口頭でもメールでも使いやすく、上司、取引先、来客などについて述べるときに適しています。

  • 取引先の佐藤様は、明日の14時にいらっしゃいます。
  • 部長は会議室にいらっしゃいました。
  • 来週の説明会には、何名いらっしゃいますか。

「いらっしゃる」には「行く」「いる」の尊敬語としての用法もあります。「部長は会議室にいらっしゃいます」は、文脈によって「会議室にいる」という意味です。到着を明確に伝えたいなら、「14時にいらっしゃいます」「ただいま到着されました」のように時間や状況を添えましょう。

来訪をはっきり示す「お越しになる」「おいでになる」

「お越しになる」も「来る」の尊敬語で、相手がその場所を訪れることを明確に表せます。案内状や来客対応では「本日はお越しいただき、ありがとうございます」のような関連表現もよく使います。「おいでになる」も尊敬語ですが、「いらっしゃる」と同じく「行く」「いる」を表すことがあります。

  • お客様がお越しになりました。受付までお迎えに行きます。
  • 当日は開始10分前を目安にお越しください。
  • 先生は何時ごろおいでになりますか。

来訪のお礼や案内では「お越し」が便利です。ただし「お越しになる」は相手の動作を述べる形、「お越しいただく」は相手に来てもらうことを自分側の立場から述べる形です。続く動詞によって、敬語としての働きが変わります。

自分が相手のもとへ行くときは「参る」「伺う」

自分や自社の担当者が取引先へ向かうなら、相手を高める「いらっしゃる」は使いません。「参る」または「伺う」を選びます。どちらも自分側の動作を控えめに表しますが、訪問先の相手を意識して伝えるなら「伺う」が特に自然です。

  • 私が明日の10時に御社へ伺います。
  • 担当の田中と2名で、受付に伺います。
  • 明日は私が会場へ参ります。

「伺う」には「尋ねる」「聞く」の謙譲語としての意味もあります。「詳細を伺います」は訪問ではなく「詳しい話を聞く」という意味です。場所に行く意味を明確にしたいときは、「御社へ伺います」のように行き先を添えましょう。

社外の人に自社の担当者の動きを伝える場合も、自分側を高めないのが基本です。「弊社の田中が15時に伺います」は自然ですが、「弊社の田中が15時にいらっしゃいます」は、自社の人を高める表現になるため避けます。反対に、訪問してくれる取引先の担当者について「佐藤様が15時に参ります」と言うのも適切ではありません。

依頼・確認・お礼で使える「来る」の敬語例文

相手に来てほしいとき

来訪を依頼するときは、「お越しください」が簡潔です。相手の都合を確認したい場合や、依頼をやわらかく伝えたい場合は、疑問形にするとよいでしょう。

  • 案内する:当日は3階の受付までお越しください。
  • 都合を確認する:来週水曜日の14時にお越しいただけますか。
  • より丁寧に依頼する:お忙しいところ恐れ入りますが、弊社までお越しいただけますと幸いです。

「お越しくださる」は、来てくれる相手の動作を高める言い方です。一方、「お越しいただく」は、相手に来てもらうことを自分側から述べる言い方です。「お越しください」「お越しいただけますか」のどちらも使えますが、日時を指定してお願いするときは後者のほうが、相手の都合を尋ねる形になります。

来訪予定や到着を確認するとき

予定の確認では、単に「いつ来ますか」と聞くより、確認したい内容を具体的に示すと行き違いを防げます。

  • 明日は何時ごろお越しになりますか。
  • ご来社は13時の予定でお間違いないでしょうか。
  • 佐藤様はすでにお見えになっていますか。

「お見えになる」も来訪を表す尊敬語です。到着済みかどうかを尋ねる場面で使えます。ただし「見える」だけでは「姿が見える」という意味にも取れるため、迷う場合は「お越しになる」「いらっしゃる」を選ぶと伝わりやすくなります。

来訪のお礼を伝えるとき

訪問してくれた相手へのお礼には「お越しいただき、ありがとうございます」が使いやすい表現です。過去の訪問を改めて振り返るメールなら「先日は弊社までお越しいただき、ありがとうございました」とします。

  • 当日の受付・会場で:本日はお越しいただき、ありがとうございます。
  • 面談後のメールで:本日はお忙しい中、弊社までお越しいただき、誠にありがとうございました。

訪問に伴う移動の負担にも触れたいなら「ご足労いただき、ありがとうございます」という言い方もあります。ただし、どの訪問にも必ず添える必要はありません。まずは「お越しいただき、ありがとうございます」で十分です。

「来られる」は間違い?間違えやすい敬語を整理

「来られる」は尊敬語として使えるが、意味が紛れやすい

「来られる」は、「来る」に尊敬を表す「られる」を付けた形で、尊敬語として誤りではありません。「明日、先生が来られます」は、先生が来ることを敬って述べています。

ただし、「来られますか」は文脈によって「お越しになりますか」という尊敬の意味にも、「来ることができますか」という可能の意味にも受け取れます。予定を聞きたいなら「明日、お越しになりますか」、来られるかどうか都合を聞きたいなら「明日、お越しいただけますか」と言い分けると明確です。

敬語を重ねすぎない

丁寧にしようとして、同じ動作に敬語を重ねすぎないよう注意しましょう。次の2例は、短く言い換えると自然です。

  • 「いらっしゃられる」→「いらっしゃる」。「いらっしゃる」自体が尊敬語です。
  • 「お越しになられる」→「お越しになる」。「お越しになる」に、さらに尊敬の「られる」を重ねる必要はありません。

また、「来ます」は丁寧語ですが、それだけで相手の動作を高めるわけではありません。「社長が来ます」でも文として丁寧ではあるものの、社長への敬意を明確に示すなら「社長がいらっしゃいます」とします。反対に、自分について「私がいらっしゃいます」とは言わず、「私が参ります」「私が伺います」と言いましょう。

まとめ|「来る」の敬語は誰が動くかで決まる

「来る」の敬語で迷ったら、次の3点を確認してください。

  • 相手・上司が来る:「いらっしゃる」「お越しになる」
  • 自分側が相手のもとへ行く:「参る」「伺う」
  • 文を丁寧に述べる:「来ます」

依頼なら「お越しいただけますか」、来訪のお礼なら「お越しいただき、ありがとうございます」を覚えておくと、メールでも会話でも役立ちます。つまり、「来る」の敬語は言葉の丁寧さだけでなく、「誰が来るか」で選ぶのが基本です。