「もらう」の敬語は?いただく・頂戴すると「くださる」の違い

結論:「もらう」の敬語は、誰が受け取るかで決まる

「もらう」を敬語にするときは、受け取る人が自分側か、相手側かを最初に確認しましょう。自分が目上の人から何かをもらうなら、謙譲語の「いただく」を使います。一方、目上の人が受け取るなら、「お受け取りになる」などで相手の動作を立てます。

  • 自分が資料をもらう:「資料をいただきました」
  • 上司が資料をもらう:「部長が資料をお受け取りになりました」
  • 相手に資料をもらってほしい:「資料をお受け取りください」

「もらいます」も丁寧語ですが、相手から受ける行為をへりくだって表すわけではありません。社外の人や目上の人とのやり取りでは、場面に応じて「いただく」を選ぶと自然です。以下では、使い分けの理由からメールにそのまま使える例文まで順に確認します。

ほかの動詞もあわせて整理したい方は、よく使う動詞の敬語(基本編)についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

「もらう」の敬語は3種類を区別する

自分がもらう場合は「いただく」

「いただく」は、「もらう」の謙譲語です。自分が受け取る行為を控えめに述べることで、渡してくれた相手を立てます。たとえば「取引先から見積書をもらいました」は、「取引先から見積書をいただきました」と言い換えられます。物だけでなく、連絡や説明などを受ける場合にも使えます。

「昨日、先生からお返事をいただきました」のように、過去の出来事にもそのまま使えます。対外的な会話で自社の上司から資料を受け取った話をする場合も、「弊社の部長から資料をいただきました」と、自分側の受け取る動作をへりくだって述べられます。

相手がもらう場合は「お受け取りになる」

目上の人が受け取る動作を表すなら、尊敬の表現にします。「部長が記念品をお受け取りになりました」「お客様が書類をお受け取りになります」のように使いましょう。ただし、「お受け取りになる」は、資料や品物などを実際に受け取る場面に向いた言い方です。相手が説明や助言をもらう場合は、「説明をお聞きになる」など、内容に合う動詞を選ぶほうが自然です。

「もらいます」は丁寧語

「もらいます」は「もらう」に「ます」を付けた丁寧語です。相手に丁寧に話す表現ですが、受け取る側をへりくだらせる「いただく」とは働きが違います。たとえば「今日、資料をもらいます」は丁寧な話し方ではあるものの、取引先に直接依頼するなら「資料をいただけますか」のほうが適しています。

受け取る人・場面 主な言い方 例文
自分が目上の人からもらう いただく 資料をいただきました。
目上の人が受け取る お受け取りになる 部長がお受け取りになりました。
丁寧に事実を述べる もらいます 担当者から資料をもらいます。

迷ったら、まず文の主語を「私」または「相手」に置き換えてみてください。「私がもらう」なら「いただく」、「相手が受け取る」なら「お受け取りになる」が基本です。

ビジネスで使う「もらう」の言い換え例

資料・名刺・贈り物を受け取る

物を受け取ったことを伝えるときは、「何を」「誰から」受け取ったかを明確にすると、短い文でも伝わりやすくなります。「先ほど資料をいただきました。ありがとうございます」「本日はお名刺をいただき、ありがとうございました」のように述べます。

「頂戴する」も「もらう」の謙譲表現です。「資料を頂戴しました」はビジネスでも使えますが、日常的な連絡では「いただきました」のほうが簡潔です。「賜る」は「ご支援を賜り、誠にありがとうございます」のような、改まった挨拶や文書で用いられます。普段のメールで一律に「賜る」へ置き換える必要はありません。

連絡・説明・助言をもらう

形のないものを受けるときも「いただく」が使えます。「ご連絡をいただき、ありがとうございます」「詳しいご説明をいただき、理解が深まりました」「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」などです。

ただし、言葉を機械的に置き換えるより、実際の行為に合わせることも大切です。たとえば「質問への答えをもらう」なら「ご回答いただく」、「確認結果をもらう」なら「ご確認の結果をご連絡いただく」とすると、相手に何をお願いしているかがより明確になります。

「〜してもらう」は「〜していただく」

「資料を見てもらう」「日程を調整してもらう」のように、相手に動作をしてもらう場合は、「〜していただく」が基本です。「資料を確認していただく」「日程を調整していただく」と言い換えます。メールでは「資料をご確認いただけますか」「日程をご調整いただけますと幸いです」のような形も便利です。

ここでの「いただく」は、資料そのものを受け取る意味ではありません。相手の行為を自分が受けるという意味です。「何をもらうのか」だけでなく、「何をしてもらうのか」に注目すると使い分けやすくなります。

依頼・お礼・受領報告で使える例文

相手に資料や連絡をお願いするとき

依頼は、用件を先に示し、必要に応じて期限を添えると分かりやすくなります。期限を指定するなら「○月○日までに」のように具体的に書きましょう。

  • 「会議資料をいただけますか。」
  • 「お手数ですが、修正版を○月○日までにお送りいただけますと幸いです。」
  • 「内容をご確認いただき、ご意見をお聞かせいただけますか。」

依頼文では「いただけますか」が簡潔です。相手の都合に配慮したい場合は「いただけますと幸いです」も使えます。ただし、遠回しな表現を重ねすぎると要件がぼやけるため、1文にお願いする動作を詰め込みすぎないことが大切です。

受け取ったことを報告するとき

メールや資料を受け取ったら、受領した対象を明記します。「資料をいただきました。内容を確認のうえ、ご連絡します」「ご連絡いただき、ありがとうございます。承知しました」などです。受け取った事実だけでなく、次に何をするかを1文添えると、相手も状況を把握できます。

書類やファイルについては「受領しました」も使えます。「見積書を受領しました」は、受け取った事実を端的に伝える表現です。「いただきました」が相手への敬意や感謝を含めやすいのに対し、「受領しました」は事務的な報告に向いています。

相手に受け取ってほしいとき

こちらから渡す物を相手に受け取ってほしい場合、「もらってください」を単に「いただいてください」とは言い換えません。「こちらの資料をお受け取りください」「記念品をお持ち帰りください」のように、相手の動作を丁寧に表します。送付の連絡なら「資料を添付しましたので、ご確認ください」も自然です。

間違えやすい敬語と、自然な直し方

「いただく」と「くださる」は主語が違う

「ご連絡いただき、ありがとうございます」と「ご連絡くださり、ありがとうございます」は、どちらも使えます。前者は「私が相手から連絡をいただく」、後者は「相手が私に連絡をくださる」という捉え方です。いただく=自分が受ける、くださる=相手が与えると整理しましょう。

たとえば「部長に資料をいただきました」と「部長が資料をくださいました」は、視点を変えて同じ出来事を述べられます。一方、「部長が私に資料をいただきました」とすると、主語と動作がかみ合いません。文を作ったら、誰がその動作をしているかを確認してください。

相手の動作に「いただく」を付けない

目上の人が物を受け取る場面で、「部長が資料をいただきました」と言うと、部長の動作をへりくだって表すことになります。相手を立てたいなら「部長が資料をお受け取りになりました」としましょう。また、「こちらをいただいてください」ではなく、「こちらをお受け取りください」が自然です。

「拝見していただく」にも注意が必要です。「拝見する」は自分が見るときの謙譲語なので、相手に確認を頼むなら「ご覧いただく」「ご確認いただく」を使います。敬語らしい言葉を増やすより、動作をする人に合った表現を選ぶことが優先です。

「いただけますでしょうか」は簡潔にできる

依頼で「ご確認いただけますでしょうか」を見かけることがあります。よりすっきり伝えるなら、「ご確認いただけますか」または「ご確認いただけないでしょうか」と言えます。丁寧さを足そうとして表現を長くするより、依頼内容を明確にするほうが伝わります。

なお、ビジネスメールでは「いただく」をひらがなで書くことが一般的です。特に「ご確認いただく」のように、ほかの動詞に続く形では「いただく」と書きます。表記に迷ったら、本文内でひらがなに統一すると読みやすくなります。

まとめ:「誰がもらうか」を決めれば、敬語は選べる

「もらう」の敬語を選ぶ手順は2つです。まず受け取る人を確認し、次に実際の動作に合う言葉を選びます。自分が目上の人から受け取るなら「いただく」、目上の人が品物を受け取るなら「お受け取りになる」。相手に何かをしてもらうなら「〜していただく」、相手に品物を受け取ってほしいなら「お受け取りください」です。

つまり、「もらう」の敬語は「誰が受け取るか」で使い分ければ大丈夫です。