結論からいうと、「おられる」は相手や第三者の存在を敬って表す言い方として使われます。ただし、敬語として違和感を覚える人もいるため、仕事で迷ったら「いらっしゃる」を選ぶのが無難です。一方、自分や自社の人について取引先に話すときは「おります」を使います。
「おられる」は、使う場面まで含めて考えることが大切です。この記事では、意味と敬語上の考え方を整理したうえで、電話・メール・社内会話での言い換えを具体的に紹介します。
「おられる」は正しい敬語?まず押さえたい結論
尊敬の意味で使われるが、受け止め方には差がある
「おられる」は、「いる」という意味の「おる」に、尊敬を表す「れる」が付いた形です。「先生がおられる」「部長がおられる」のように、相手や話題にしている人を敬う表現として使われます。
ただし、「おる」をへりくだった言い方として覚えている人には、「目上の人に使うのは変では?」と感じられることがあります。そのため、「おられる」を一律に誤りと決めつける必要はありませんが、誰にでも違和感なく伝わる表現とも言い切れません。
特に、取引先への連絡や採用面接など、相手の言葉の好みが分からない場面では、次の3つを使い分けると安心です。
- 相手・目上の人がいる:いらっしゃる
- 自分がいる:おります
- 取引先に自社の人の所在を伝える:おります
たとえば、取引先に「田中部長はおられますか」と尋ねるより、「田中部長はいらっしゃいますか」と言うほうが無難です。ほかの紛らわしい表現も確認したい方は、間違えやすい敬語についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
「おられる」「いらっしゃる」「おります」の違い
敬う相手は誰かで選ぶ
使い分けの基本は、「誰がいるのか」と「誰に向かって話すのか」の2点です。「いらっしゃる」は、動作や状態の主体である相手・第三者を高める言い方です。「おります」は、自分側について丁寧に述べる言い方です。
| 表現 | 主な使い方 | 例文 |
|---|---|---|
| いらっしゃる | 相手や敬うべき人について述べる | 「佐藤様はいらっしゃいますか」 |
| おられる | 相手や第三者を敬って述べる。受け止め方に差がある | 「会場に先生がおられます」 |
| おります | 自分や、社外の人に対する自社の人について述べる | 「担当者は社内におります」 |
注意したいのは、社内では「上司」でも、取引先に対して話すときは「自社側の人」だという点です。取引先から「田中さんはいらっしゃいますか」と聞かれたら、「田中はただいま席を外しております」と答えられます。この場合、自社の田中を高める必要はありません。
「おられる」は二重敬語なのか
「おられる」を「おる」に「れる」が付いているから二重敬語だと説明することがあります。しかし、敬語の形が重なって見えるだけで、機械的に二重敬語と断定するのは適切ではありません。「おる」の使われ方や「おられる」の受け止め方には幅があります。
実際の会話では、文法上の分類だけでなく、聞き手にどう伝わるかも重要です。「おられる」は周囲で自然に使われていても、初めて話す取引先が同じように受け取るとは限りません。正誤を争うより、誤解を避けたい場面では「いらっしゃる」に言い換える、と考えると実用的です。
場面別:「おられる」をどう言い換える?
電話で相手の在席を確認するとき
電話では、相手の会社にいる人について尋ねるため、「いらっしゃいますか」が使いやすい表現です。
- 無難:「営業部の佐藤様はいらっしゃいますか」
- より具体的:「営業部の佐藤様は、ただいまお席にいらっしゃいますか」
- 避けたい言い方:「営業部の佐藤様はおりますか」
最後の「おりますか」は、自分側について使う言い方を相手側に向けているため、不自然に聞こえます。また、電話を受けて自社の担当者の所在を答えるなら、「佐藤はただいま外出しております」「佐藤は社内におります」と伝えます。尋ねる側と答える側で、敬語の向きが変わる点がポイントです。
メールで相手の参加・在籍を確認するとき
メールでも、相手側の人については「いらっしゃる」が無難です。ただし、確認したい内容が「その場にいるか」ではなく「参加するか」「所属しているか」なら、その意味を直接表す言葉を選ぶと、さらに伝わりやすくなります。
- 所在を確認:「当日、鈴木様は会場にいらっしゃいますか」
- 参加を確認:「当日、鈴木様はご参加の予定でしょうか」
- 所属を確認:「現在も鈴木様がご担当でしょうか」
「おられますか」を「いらっしゃいますか」に置き換えるだけでなく、何を確認したいのかを一度考えると、用件の行き違いも防げます。
社内や身近な相手との会話で使うとき
職場や地域によっては、「課長はもうおられますよ」のような言い方が自然に使われています。周囲で定着しており、聞き手も違和感なく受け止めているなら、無理に言い直す必要はありません。
一方、社内で自然でも、社外向けの文書にそのまま持ち込むと印象が変わることがあります。社内では慣れた表現、社外では受け手を選びにくい表現、と場面によって切り替えるのがよいでしょう。
「おられる」で間違えやすい3つのポイント
1.自分や自社の人を「おられる」で高めない
自分について「私は明日、事務所におられます」、取引先に対して自社の上司について「弊社の部長がおられます」と言うのは避けましょう。「おられる」は、その人を敬って述べる言い方だからです。
- 自分について:「私は明日、事務所におります」
- 取引先に自社の人について:「部長の山田は、ただいま社内におります」
ただし、自社の人が相手の場合でも、社内で本人に直接話しかけるなら事情は異なります。「部長は明日、会社にいらっしゃいますか」と、話し相手である部長を敬うのは自然です。「自社の人には常に『おります』」ではなく、誰に対して誰のことを話すかを確認してください。
2.「いらっしゃられます」は避ける
「いらっしゃる」自体に尊敬の意味があります。そこへさらに尊敬の「れる」を付けた「いらっしゃられる」は、二重敬語とされる言い方です。「社長はいらっしゃられますか」ではなく、「社長はいらっしゃいますか」で十分丁寧に伝わります。
敬意を強めようとして言葉を重ねるより、まずは1つの適切な表現を選ぶことが大切です。
3.「おられない」を機械的に使わない
「担当者がおられないようです」と言うより、相手側については「担当者はいらっしゃらないようです」、自社側について社外に伝えるなら「担当者はただいま席を外しております」と言い分けるほうが明確です。
不在の理由が分かっていないときに「外出しております」と断定するのも避けましょう。「ただいま席におりません」「確認いたします」など、分かっている事実に合わせて答えます。
迷ったときは「誰のことを、誰に話すか」を確認しよう
「おられる」の使い分けで迷ったら、次の順番で考えると整理できます。
- 1.いるのは誰か:相手側・敬う相手か、自分側かを確認する
- 2.聞き手は誰か:社内の人か、取引先など社外の人かを確認する
- 3.何を伝えたいか:所在・参加・所属のどれかを確認する
相手や目上の人の所在なら「いらっしゃる」、自分や社外に伝える自社の人の所在なら「おります」が基本です。「おられる」は尊敬の意味で使われる一方、受け止め方に差がある表現として覚えておきましょう。
つまり、「おられる」を一律に間違いとはせず、迷う場面では「いらっしゃる」「おります」を相手との関係に合わせて選べば安心です。

