結論:「になります」は敬語だが、何にでも使える言葉ではない
「になります」は、動詞「なる」に丁寧な「ます」を付けた表現です。したがって、「になります」そのものが間違った敬語というわけではありません。ただし、「なる」には状態が変わる、ある結果に至るという意味があります。変化を伝えていないのに「こちらが資料になります」のように使うと、回りくどく聞こえることがあります。
迷ったら、次の2点を確認しましょう。
- 変化や結果がある:「来月から新料金になります」など、「になります」が自然
- 物や人を説明するだけ:「こちらが資料です」「私が担当いたします」などが明確
大切なのは「になります」を一律に避けることではなく、伝えたい内容に合わせて言葉を選ぶことです。間違えやすい敬語をまとめて確認したい方は、間違えやすい敬語についてさらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
「になります」の意味と、違和感が生まれる理由
基本は「なる」の丁寧な形
「なります」の中心にある「なる」は、「別の状態になる」「決まった結果に至る」といった意味を持ちます。たとえば「気温が低くなります」「確認後、正式な見積額になります」は、前後で状態や扱いが変わることを表しています。「ます」は聞き手に対する丁寧さを加えますが、「なる」の意味まで消すわけではありません。
一方、「こちらが申込書になります」と言うと、単に申込書を示しているのか、別の書類から申込書に変わったのかが文脈によって曖昧になります。実際の会話では単なる紹介だと伝わる場合もありますが、物を指し示すだけなら「です」「でございます」のほうが簡潔です。
「です」「でございます」との違い
「です」は、内容を丁寧に言い切る基本形です。「でございます」は「です」より改まった言い方で、接客やかしこまった案内でも使われます。ただし、丁寧さを優先してすべてを「でございます」にする必要はありません。社内のやり取りなら「です」で十分な場面も多くあります。
| 伝えたいこと | 使いやすい表現 | 例 |
|---|---|---|
| 物・人の説明 | です/でございます | こちらが資料です |
| 状態の変化 | になります | 来月から料金が変わり、月額3,000円になります |
| 自分の行動 | 動作を表す言葉 | 私が確認いたします |
表のとおり、選び方の軸は「どれが最も丁寧か」だけではありません。何が起きるのかを正確に示せるかが重要です。
接客・ビジネスでよくある「になります」の言い換え例
物を渡す:「こちら、コーヒーになります」
注文品を運ぶ場面では、「ご注文のコーヒーです」または「ご注文のコーヒーでございます」と言うと、何を渡しているのかがはっきりします。「こちら」を使うなら「こちらはご注文のコーヒーです」と助詞を補うと自然です。
同じ考え方で、「こちらが契約書になります」は「こちらが契約書です」、「添付が見積書になります」は「見積書を添付いたします」と言い換えられます。メールでは、添付したという自分の行動まで示すと、より分かりやすくなります。
金額を伝える:「お会計は1,100円になります」
会計時の「お会計は1,100円になります」は広く使われる表現で、計算した結果の金額を示すと捉えることもできます。そのため、必ず誤りと決めつける必要はありません。ただし、金額だけを明確に伝えたいなら「お会計は税込1,100円です」「お会計は税込1,100円でございます」で十分です。
一方、見積額の変更を伝える「送料を加えると、合計は1,100円になります」には、計算後の結果という意味が明確にあります。同じ金額の案内でも、計算や変更の流れを説明しているかで自然さが変わります。
人や予定を紹介する:「担当は私になります」
担当者を名乗るなら「私が担当いたします」が簡潔です。「担当は私です」も誤りではありませんが、業務を引き受けることまで伝えたい場合は「担当いたします」が役立ちます。
予定の案内でも、「会議は15時からになります」より「会議は15時からです」または「会議は15時に始まります」のほうが明確です。開始時刻が変更されたなら、「会議の開始時刻は14時から15時に変更になります」よりも、「会議の開始時刻を14時から15時に変更しました」とすると、変更内容と行為が具体的に伝わります。
「になります」が自然に使えるのはどんなとき?
状態・立場・数量が変わるとき
「なる」が表す変化を、そのまま伝えられる場面では「になります」が自然です。前後の違いが見える例を確認しましょう。
- 「4月から営業時間が午後6時までになります」:営業時間が変わる
- 「試用期間の終了後は、正式な会員になります」:立場が変わる
- 「2点購入すると、合計が3,000円になります」:計算の結果を示す
- 「担当者の確認後、申請は受理済みになります」:手続き後の状態を示す
「前はどうだったか」「何をした結果なのか」を説明できるなら、「になります」を使う根拠があります。逆に、初めからそこにある資料を指しているだけなら、「資料です」のほうがすっきりします。
完成や切り替えの過程を説明するとき
「この原稿を整えると、最終版になります」のように、完成までの過程を示す使い方も自然です。また、「現在のプランは3月末で終了し、4月から新プランになります」なら、切り替えが明確に伝わります。
ただし、変化がある場面でも、必ず「になります」が最適とは限りません。「4月から新プランに変わります」「確認後に最終版としてお送りします」など、具体的な動詞を使うと、相手が次の動きを理解しやすくなる場合があります。
言い換えで迷わないための3ステップ
1.「何が変わるか」を言えるか確認する
まず、文に「以前はAだったが、今後はBになる」という流れがあるかを考えます。たとえば「月額料金が2,000円から2,500円になります」には変化があります。一方、「こちらが料金表になります」は、料金表を紹介しているだけなら「こちらが料金表です」で足ります。
2.紹介・案内・行動のどれかを見分ける
物や人の紹介なら「です」「でございます」、日時や場所の案内なら「始まります」「開催します」、自分の行動なら「確認します」「お送りします」などを検討します。「になります」を別の丁寧語に機械的に置き換えるより、文の目的から選ぶほうが自然です。
3.声に出して、短く伝わるか確かめる
最後に、相手が一度で内容を理解できるかを確認しましょう。「こちらがご案内の資料になります」より「ご案内の資料はこちらです」のほうが、要点を早く伝えられます。特にメールでは、読み手が流し読みしても分かるよう、1文で伝える内容を絞ると効果的です。
まとめ:「になります」は変化・結果に使い、単なる説明は「です」で伝える
「になります」は敬語として使える表現ですが、丁寧に聞かせるためだけに足す言葉ではありません。変化や結果を伝えるなら「になります」、物や人を示すだけなら「です」「でございます」を基本にすると、接客でもビジネスでも伝わりやすくなります。
つまり、「何になるのか」を説明できない場面では、もっと直接的な言い方を選ぶのがコツです。

