謙譲語とは?謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)の違いも解説

謙譲語とは、自分または自分側の人物の行動を低く表現し、相手を立てる敬語です。たとえば「会う」を「お目にかかる」、「言う」を「申し上げる」と表現します。

使い方を判断するときのポイントは、「誰の行動か」「その行動が誰に向かうか」の2点です。自分側から敬意を示す相手へ向かう行動なら、謙譲語が適しています。一方、相手の行動を高める場合は尊敬語を使います。

この記事では、謙譲語の基本から尊敬語との違い、よく使う表現、間違いやすい例まで順番に解説します。敬語全体の仕組みも確認したい方は、敬語の基本と種類についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

敬語の謙譲語とは?意味を簡単に解説

謙譲語は、自分側の動作や状態を控えめに表現することで、その動作に関係する相手へ敬意を示す言葉です。単に自分を卑下する表現ではありません。相手との関係を言葉で適切に示すことが本来の役割です。

たとえば、取引先の担当者に会ったことを伝える場合、「私は田中様に会いました」よりも「私は田中様にお目にかかりました」と表現するほうが、田中様を立てた言い方になります。

謙譲語には2つの種類がある

文化庁の「敬語の指針」では、従来まとめて謙譲語と呼ばれていた表現を、主に「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ(丁重語)」に分けています。

  • 謙譲語Ⅰ:自分側から相手側へ向かう行為を低く表し、その相手を立てる言葉
  • 謙譲語Ⅱ(丁重語):自分側の行為を聞き手や読み手に対して丁重に述べる言葉

「先生のところへ伺う」の「伺う」は、訪問先である先生を立てる謙譲語Ⅰです。一方、「明日、京都へ参ります」の「参る」は、話を聞いている人に対して移動を丁重に伝える謙譲語Ⅱに当たります。

日常やビジネスでは両方を広く「謙譲語」と呼ぶ場合が多いため、まずは「相手を立てる表現」と「自分の行為を丁重に述べる表現」があると理解すれば十分です。

謙譲語・尊敬語・丁寧語の違い

敬語で迷ったときは、言葉の形を暗記する前に、動作の主体を確認しましょう。自分側の行動には謙譲語、相手側の行動には尊敬語、文全体を丁寧にする場合は丁寧語を使うのが基本です。

敬語の種類 役割 「言う」の例 主な使用場面
謙譲語 自分側を低く表して相手を立てる 申す・申し上げる 自分が顧客へ説明する
尊敬語 相手の行動や状態を高める おっしゃる 顧客や上司が発言する
丁寧語 聞き手に対して丁寧に述べる 言います 会話や文章を丁寧に整える

たとえば、取引先の発言について「担当者が申しました」と言うのは不適切です。「申す」は自分側に使う表現だからです。この場合は「担当者がおっしゃいました」とします。

反対に、取引先へ自社の部長の発言を伝えるときは、「弊社の部長がおっしゃいました」ではなく「弊社の部長が申しておりました」が基本です。社外の相手に対しては、上司も自分側の人物として扱います。

3ステップで使い分ける方法

敬語を選ぶ際は、次の3ステップで考えると判断しやすくなります。

  • ステップ1:動作をする人は誰か確認する
  • ステップ2:敬意を示す相手は誰か確認する
  • ステップ3:自分側の動作なら謙譲語、相手側の動作なら尊敬語を選ぶ

たとえば「明日、私が御社へ行く」なら、動作の主体は「私」、敬意を示す相手は「御社」です。そのため、「明日、御社へ伺います」と表現します。

よく使う謙譲語一覧と例文

謙譲語には、動詞そのものが別の言葉に変わる表現があります。使用頻度の高いものから覚えると、ビジネスメールや電話対応ですぐに活用できます。

基本の言葉 主な謙譲語 例文
行く・訪ねる 伺う、参る 明日10時に御社へ伺います。
来る 参る 担当の者がすぐに参ります。
いる おる 担当者は社内におります。
言う 申す、申し上げる 私から詳しく申し上げます。
聞く・尋ねる 伺う ご希望の日程を伺います。
見る 拝見する 送付いただいた資料を拝見しました。
読む 拝読する 先生の著書を拝読しました。
会う お目にかかる 先日はお目にかかれて光栄でした。
知る 存じる、存じ上げる その件は存じております。
受け取る 頂戴する、拝受する 確かに資料を拝受しました。
見せる お目にかける 完成した見本をお目にかけます。
する いたす 後ほどこちらからご連絡いたします。

「お・ご〜する」の基本形

専用の謙譲語がない動詞は、「お・ご〜する」の形で表現できる場合があります。一般に、和語には「お」、漢語には「ご」を付けます。

  • 案内する → ご案内する
  • 説明する → ご説明する
  • 届ける → お届けする
  • 待つ → お待ちする

より丁寧に伝えるなら、「ご案内いたします」「お届けいたします」のように「いたす」を組み合わせます。ただし、「電話」「料理」などの名詞に「お・ご」を付ければ、すべて謙譲語になるわけではありません。動作全体が相手に向かっているかを確認することが大切です。

「存じる」と「存じ上げる」の違い

「存じる」は「知る」「思う」の謙譲表現です。「存じ上げる」は、主に人物を知っている場合に使います。

  • その規則は存じております。
  • 山田先生のことは存じ上げております。
  • お元気のことと存じます。

物事に対して「存じ上げる」を使う表現は、一般的には避けたほうが自然です。

ビジネスでの謙譲語の使い方

社外の相手には自社の上司を立てない

社内では上司に尊敬語を使いますが、取引先との会話では、自社の上司を自分側の人物として扱います。この「内と外」の区別は、ビジネス敬語の重要な原則です。

  • 社内で部長について話す:部長がおっしゃいました。
  • 社外の人へ部長について話す:部長の佐藤が申しておりました。

社外の相手に「佐藤部長がおっしゃっていました」と伝えると、自社の人物を相手より高める形になります。また、社外向けには「弊社の佐藤部長」ではなく、「部長の佐藤」または「弊社の佐藤」とするのが基本です。

電話やメールで役立つ定型表現

頻繁に使う場面では、1文単位で覚えると間違いを減らせます。

  • 電話をかけたとき:私、株式会社〇〇の田中と申します。
  • 担当者の不在を伝えるとき:担当の佐藤は外出しております。
  • 確認を約束するとき:社内で確認のうえ、改めてご連絡いたします。
  • 資料を受け取ったとき:資料を拝受しました。ありがとうございます。
  • 訪問予定を伝えるとき:10月15日の14時に伺います。

日時は「明日の午後」だけでなく、「10月15日14時」のように具体的に示すと、敬語の正しさに加えて連絡の正確性も高まります。

謙譲語のよくある間違いと注意点

相手の行動に謙譲語を使わない

最も注意したいのは、相手の行動を謙譲語で表してしまう誤りです。

  • 誤:部長が資料を拝見しました。
  • 正:部長が資料をご覧になりました。
  • 誤:お客様が受付へ参りました。
  • 正:お客様が受付へいらっしゃいました。

「拝見する」「参る」は、原則として自分側の行為を表します。相手の行為には「ご覧になる」「いらっしゃる」などの尊敬語を選びます。

敬語を重ねすぎない

丁寧にしようとして敬語を重ねると、かえって不自然になることがあります。たとえば「ご覧になられる」は、「ご覧になる」と「られる」という2つの尊敬表現が重なった二重敬語です。「ご覧になる」だけで十分です。

一方、「お伺いする」は、敬語が重なっているように見えるものの、広く定着した表現として使われています。ただし、「お伺いさせていただきます」のように長く重ねると回りくどくなります。多くの場面では「伺います」で明確かつ丁寧です。

「させていただく」を多用しない

「させていただく」は、基本的に相手や第三者の許可を受け、その行為によって自分側が恩恵を受ける場合に適した表現です。

  • 自然な例:許可をいただき、資料を掲載させていただきます。
  • 簡潔な例:会議を開始いたします。
  • 簡潔な例:商品を発送いたしました。

許可や恩恵を特に意識しない行為まで「させていただく」にすると、文章が長くなります。「いたします」で意味が通る場合は、簡潔な表現を優先しましょう。

迷ったら主語と相手を確認する

謙譲語を正しく使うために、すべての単語を一度に暗記する必要はありません。まずは「誰がするのか」「誰を立てるのか」の2点を確認してください。

  • 自分が取引先を見る → 資料を拝見します。
  • 取引先が資料を見る → 資料をご覧になります。
  • 自分が取引先へ行く → 御社へ伺います。
  • 取引先が自社へ来る → 弊社へいらっしゃいます。

つまり、謙譲語とは「自分側の行動を控えめに表し、相手を立てる敬語」です。主語と敬意の向きを確認し、「伺う」「申す」「拝見する」など使用頻度の高い表現から身につければ、電話・メール・対面のいずれでも自然に使えるようになります。