尊敬語とは?作り方と「れる・られる」の正しい使い方

尊敬語とは、相手や話題に出てくる人物の動作・状態を高め、その人への敬意を表す敬語です。「言う」を「おっしゃる」、「見る」を「ご覧になる」と表現するのが代表例です。

大切なのは、尊敬語が「誰の動作を高める言葉なのか」を確認することです。目上の人が主語なら尊敬語、自分や自社の人が主語なら基本的に謙譲語を使います。まずは頻出する10語程度の特別な言い換えを覚えれば、日常会話やビジネスメールの多くに対応できます。

尊敬語とは相手側の人物を高める敬語

敬語は、文化庁の「敬語の指針」では、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に分けられています。そのうち尊敬語は、相手や第三者の行為、物事、状態などを高く表現する言葉です。

例えば、取引先の担当者が資料を読んだことを伝える場合は、次のように表現します。

  • 通常の表現:担当者が資料を読みました。
  • 尊敬語:担当者が資料をお読みになりました。

「読む」という動作を尊敬語に変えることで、その動作をした担当者への敬意を示しています。尊敬語を判断するときは、文の主語に注目すると分かりやすくなります。

尊敬語・謙譲語・丁寧語の違い

尊敬語と混同しやすいのが謙譲語です。両者の違いは、簡単にいえば「相手側を高めるか、自分側を低めるか」にあります。

種類 役割 例文
尊敬語 相手側の人物や動作を高める 先生がご覧になります
謙譲語 自分側の動作を低く表し、相手を立てる 私が拝見します
丁寧語 聞き手に対して丁寧に伝える 私が見ます

「ご覧になる」と「拝見する」は、どちらも「見る」に関係する敬語ですが、主語が異なります。「部長が拝見しました」のように、目上の人の動作へ謙譲語を使うのは不適切です。

敬語全体の分類や謙譲語・丁寧語との関係を整理したい方は、敬語の基本と種類についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

尊敬語を作る3つの基本パターン

尊敬語には、大きく分けて3つの作り方があります。すべての動詞に同じ形を当てはめられるわけではないため、自然さも含めて使い分けることが重要です。

1.「お・ご〜になる」を使う

もっとも基本的な形は「お・ご+動詞の連用形+になる」です。和語には「お」、漢語には「ご」を付けるのが一般的な目安です。

  • 読む:お読みになる
  • 待つ:お待ちになる
  • 帰る:お帰りになる
  • 利用する:ご利用になる
  • 出席する:ご出席になる

ただし、「見る」は「ご覧になる」、「来る」は「いらっしゃる」のように、特別な尊敬語を使うほうが自然な動詞もあります。また、「お・ご」が付くかどうかは慣用によって決まる場合があるため、「和語なら必ずお、漢語なら必ずご」と機械的に判断しないようにしましょう。

2.「れる・られる」を付ける

動詞に尊敬の助動詞「れる・られる」を付ける方法もあります。

  • 部長が話される
  • 先生が来られる
  • 社長が説明されました

簡潔で使いやすい一方、「先生が資料を見られました」のように、受け身や可能の意味と区別しにくくなることがあります。誤解を避けたい場合は「ご覧になりました」など、特別な尊敬語を使うと明確です。

3.特別な形の尊敬語に言い換える

日常やビジネスで頻繁に使う動詞の一部には、固有の尊敬語があります。使用頻度の高いものから覚えるのが効率的です。

通常の言葉 尊敬語 例文
言う おっしゃる 課長がおっしゃったとおりです
見る ご覧になる 資料をご覧になりましたか
行く・来る・いる いらっしゃる/おいでになる 明日は何時にいらっしゃいますか
する なさる どのような方法を選択なさいますか
食べる・飲む 召し上がる どうぞお早めに召し上がってください
知っている ご存じだ この件をご存じでしょうか
寝る お休みになる 先生はすでにお休みになりました
着る お召しになる すてきな服をお召しですね
くれる くださる 先生が資料をくださいました

すべてを一度に暗記する必要はありません。まず「言う・見る・行く・来る・いる・する・食べる・知る」の8種類を優先すると、会話やメールで応用しやすくなります。

ビジネスでよく使う尊敬語の例文

電話対応で使う場合

電話では相手の姿が見えないため、主語と立場を明確にする必要があります。

  • 「恐れ入りますが、お名前をおっしゃっていただけますか」
  • 「田中様は何時ごろお戻りになりますか」
  • 「先ほどのメールはご覧になりましたか」

「お名前を頂戴できますか」という表現も広く使われますが、名前そのものを受け取るわけではありません。分かりやすさを優先するなら、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」も自然です。

メールや案内文で使う場合

  • 「添付資料をご確認ください」
  • 「当日は受付までお越しください」
  • 「ご都合のよい日時をお知らせください」
  • 「すでにお申し込みの方は、本メールを破棄してください」

「お・ご〜ください」は、相手の動作を敬って依頼する代表的な表現です。ただし、依頼を連続させると命令調に感じられる場合があります。「恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」などを添えると、負担への配慮を示せます。

社内で上司に使う場合

  • 「部長はこの企画をご存じですか」
  • 「会議ではどの案を採用なさいますか」
  • 「社長は15時にお戻りになります」

社内では、上司や先輩など目上の人の動作に尊敬語を使います。一方、社外の相手に自社の上司について話す場合は、自社の上司を高めないのが基本です。例えば、取引先には「部長の田中がおっしゃいました」ではなく、「部長の田中が申しました」と伝えます。

尊敬語で間違えやすい4つのポイント

1.謙譲語を相手の動作に使わない

「申す」「伺う」「拝見する」は、自分側の動作を低く表す謙譲語です。相手の行動には使えません。

  • 誤:先生が申されました
  • 正:先生がおっしゃいました
  • 誤:部長が資料を拝見しました
  • 正:部長が資料をご覧になりました

「申される」は「申す」に尊敬の「れる」を付けた形ですが、謙譲語と尊敬語が混ざっています。「言う」の主語が目上の人なら、「おっしゃる」を選ぶのが明確です。

2.敬語を重ねすぎない

1つの言葉に同じ種類の敬語を重ねる表現を、二重敬語といいます。

  • 避けたい表現:ご覧になられる
  • 自然な表現:ご覧になる
  • 避けたい表現:お帰りになられる
  • 自然な表現:お帰りになる

「ご覧になる」だけですでに尊敬語なので、さらに「られる」を付ける必要はありません。ただし、「お召し上がりになる」「お見えになる」のように、長く使われて社会的に定着している表現もあります。過度に恐れるより、まずは1つの動詞に尊敬表現を1つ使うと考えるとよいでしょう。

3.物に尊敬語を使いすぎない

尊敬語が高める対象は基本的に人です。「資料がおっしゃっている」「会社が召し上がる」のように、意思を持たない物へ人の動作を表す尊敬語は使えません。

一方、「お名前」「ご住所」「ご意見」のように、相手に関係する物事へ「お・ご」を付けて敬意を示す表現はあります。単に「お・ご」が付いているだけで、すべてが尊敬語になるわけではない点にも注意が必要です。

4.社外では身内を高めない

敬語は役職だけでなく、話し手・聞き手との関係によって変わります。自社の社長や上司であっても、取引先に対しては身内です。

  • 社内で話す:社長がおっしゃいました
  • 取引先に話す:弊社社長の佐藤が申しました

判断に迷ったら、「その動作をした人は、今話している相手よりも自分側か相手側か」を確認しましょう。社外対応では、会社全体を自分側として扱うのが基本です。

尊敬語を正しく使うための覚え方

尊敬語を身につけるには、単語だけでなく短い例文として覚える方法が効果的です。「見る=ご覧になる」と暗記するだけでなく、「資料をご覧になりましたか」までを1セットにします。

学習するときは、次の3段階で確認してください。

  • 第1段階:文の主語が誰かを確認する
  • 第2段階:その人物を高める必要があるか判断する
  • 第3段階:特別な尊敬語、または「お・ご〜になる」へ言い換える

メールを送る前には、「誰の動作か」「謙譲語が混ざっていないか」「敬語を重ねていないか」の3点を見直すと、代表的なミスを減らせます。

つまり尊敬語とは、目上の人や相手側の動作を高める敬語です。主語を確認し、「おっしゃる」「ご覧になる」などの適切な形へ言い換えることが正しい使い方の基本です。